JCA-NETは下記の声明に賛同しました。

市民のプライバシーを侵害する捜査機関による捜査照会の中止を求めます
2019 年 5 月 28 日

呼びかけ団体(順不同)
共謀罪 NO !実行委員会 / 秘密保護法」廃止へ!実行委員会 / 許すな!憲法改
悪・市民連絡会 / ピースボート / 平和フォーラム / 日本消費者連盟 / 国際
環境 NGO グリーンピース・ジャパン / 秘密保護法対策弁護団 / 共謀罪対策
弁護団 / 共通番号いらないネット / 日本国民救援会 / 平和を実現するキリ
スト者ネット / 平和をつくり出す宗教者ネット

検察庁が、約300の企業などのリストをつくり、捜査照会を利用し、個人情報
を取得していることが明らかになりました。リストには、航空、鉄道など交通
関係の会社、コンビニ、スーパー、家電販売店、携帯電話会社などさまざな企
業名がのっています。このリストが、警察の協力のもとにつくられたことから
も明らかなように、捜査機関全体が、捜査関係事項照会(以下「捜査照会」と
略)を利用し、個人情報を取得しています。捜査照会は、裁判所のだす令状は
必要なく、捜査機関が自由におこなうことができる制度です。

私たちは、捜査機関が捜査照会を利用した、市民の個人情報取得を直ちに中止
するとともに 、 立法府が市民のプライバシーを守るために 、 捜査照会制度
のあり方を含め 、抜本的検討をおこなうよう強くもとめます。

刑事訴訟法は、捜査照会について 、 「捜査については、公務所又は公私の団
体に照会して必要な事項の報告を受けることができる 」 ( 197 条2項)と規定
しています。これにより、捜査機関は裁判所のだす令状もなく、市民の個人情
報をもつ会社、自治体、団体などから、対象者の情報をえることができます。
同制度は任意処分であり、企業や自治体は、捜査機関の要請を断ることもでき
ますが、捜査機関の強い圧力によって協力をせざるを得ない状況にあります。

捜査照会と捜索・差し押さえ令状の違いをみれば、いかに捜査照会に問題があ
るかは明白です。

捜査機関が裁判所から捜索・差し押さえ令状をとるためには、氏名、罪名、有
効期間などを記載し、またその必要性を示す資料を添付し、申請しなければな
りません。しかし、捜査照会では特定の犯罪の容疑などが示されるわけではな
く 、 「捜査のための必要がある」とするだけで簡単に市民の個人情報をとる
ことができます。第三者のチェックがなく、悪用、乱用が簡単にできる制度で
す。

かつて、警察官が、家族の日常をさぐるために、捜査照会を私的に利用してい
たことが明らかとなり、大問題になりました。

現在、この捜査照会をめぐって、問題が噴出しています。

刑事訴訟法は、1948年に制定されました。当時は、パソコン、インターネット
などは存在しませんでした。捜査員は、市民の情報を個人情報を持つ会社や自
治体などを訪問し、または電話する、郵送するなどをして取得してきました。
取得できる情報は、制限されたものでした。

ところが 、 パソコン 、 インターネットのすさまじい発展のなかで 、 個人
の交友関係 、経済状況、思想・信条、生活パターン、行動履歴まで詳細な情
報を集められるようになり、捜査機関は捜査照会を利用し、こうした個人情報
を簡単に手に入れることができるようになりました。

メディアで報道された T カードは、約6800万の人が使い、提携先の企業は昨
年11月段階で185社、店舗数は約99万にのぼるといわれています。捜査機関は、
捜査照会で T カードだけからでも利用者のさまざまな情報を取得できます。
ほかの事業者からも個人情報を取得すれば、その該当する市民の日常生活をガ
ラス張りにできます。これは、恐るべきプライバシーの侵害です。しかも、情
報を取得された市民には何の連絡もありません。これでは市民は自分のプライ
バシーを守ることができません。約70年前に制定された刑事訴訟法の捜査照会
は、 IT 社会に対応するものではありません。

それは、この間、世界、日本のプライバシー保護の動きをみても明白です昨年、
欧州で GDPR ( EU 一般データ保護規則 )が発効しました。 GDPR は GAFA (フ
エィスブック、グーグルなどの巨大 IT 企業)の個人情報独占、勝手な利用な
どを規制し、市民のプライバシーの保護を大きな目標にしています。日本は
EU から個人情報を移転するために、移転しても対応できるという個人情報保
護の水準の「十分性認定」をうけましたが、その際、 EU から「捜査照会」に
ついて問題ではないかという指摘をうけています。

日本の個人情報保護法は2015年に改正されましたが、本人の同意なしに取得し
てはならないとされる 、 人種 、 信条 、 病歴 、 前科などの 「 要配慮個
人情報 」 について 、特に保護の必要性を強調しています。捜査照会による
個人情報の取得をおこなえば、機微情報と言われる「要配慮個人情報」の取得
も可能です。令状もなく 、 「捜査の必要」というだけで 、 「要配慮個人情
報」を取得するなどということはあってはなりません。

更に、一昨年最高裁大法廷は裁判所の令状もなく容疑者の車に GPS を取り付
け、位置情報を取得する捜査手法に対して、個人のプライバシーを侵害するも
のであり、違法とする画期的な判決をだしました。捜査照会を利用した個人情
報取得は、様々な個人情報を様々な企業などから網羅的にとらえることで、市
民の個人情報をガラス張り化し、市民のプライバシーを保障する憲法13条に違
反し、違法です。以上の理由により、私たちは、市民のプライバシーを侵害す
る捜査機関による捜査照会を利用した情報の恣意的な取得を直ちに中止するよ
う強く求めます。