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7amleh(アラブソーシャルメディア開発センター)は、パレスチナのデジタル上の権利、特に7amlehは、パレスチナ人のための安全で公正で自由なデジタル空間を創出するために、パレスチナの活動家や市民社会にデジタルの権利、デジタルアクティビズム、デジタルセキュリティの能力構築の機会を提供活動してきました。7amlehは、これまでも多くのレポートを公表しており、そのうち24年9月に公表された「パレスチナ人のデジタルの権利、ジェノサイド、そしてビッグテックの説明責任」については日本語に翻訳してJCA-NETのサイトで提供しています。
7amlehは、今年9月に新たなレポートを公表しました。今回は、パレスチナで最も多くの利用者がいるMeta社傘下のSNS、Facebook、Instagram、Whatsappに焦点をあてています。これらのサービスについては、パレスチナ人の間でもイスラエリ人の間でも圧倒的に多くの人たちが利用するサービスになっています。このレポートでは、事実上のサイバー公共空間とでもいえるインフラとなっているMeta社のサービスが、ガザのジェノサイドに加担する深刻な役割を明かにし、民間企業であってもジェノサイドの加害責任から逃れえないことを強調しています。サイバー空間の言論は戦時における「情報戦」の主戦場であり、戦争の不可欠な条件になっていることをあらためて本レポートは明かにしています。(JCA-NET としまる)
報告書本文(PDF)

以下はレポートの「はじめに」です。全文はこちらをごらんください。
はじめに
MetaはFacebook、Instagram、WhatsAppの親企業であり、世界最大のソーシャルメディア企業だ。Metaの2024年事業・財務報告書(1)によれば、全プラットフォームの1日あたりアクティブユーザー数は33億5000万人に達する。Metaのプラットフォームはパレスチナのデジタル環境において中心的な役割を果たしており、パレスチナ人の65%以上が少なくとも1つのMetaプラットフォームを利用している(2)。イスラエルではMetaのツールの浸透度がさらに高く、イスラエル人の87%が少なくとも1つのMetaプラットフォームを利用しており、Facebook、Instagram、WhatsAppの一日当りアクティブユーザー率は75%に達する(3)。
パレスチナでは、メディア機関やデジタルインフラが組織的に未発達で、しばしば検閲されている。そのためユーザーはFacebookとInstagramに頼り、それらを命綱として、家族やコミュニティ、そしてより広い社会と繋がる手段と見なしている。Metaのプラットフォームはパレスチナで最も広く利用されている。これらはパレスチナ人を互いに結びつけるだけでなく、世界と繋ぎ、戦争犯罪の記録を支援し、圧倒的な抑圧の中で周縁化された声に耳を傾けることを可能にしている。しかし、近年の歴史で最も壊滅的な攻撃の一つであるガザでの継続的なジェノサイドにおいて、Metaはパレスチナ人の声を保護できなかっただけでなく、危害を積極的に助長した。
本報告書は、パレスチナ人が最も緊急に保護を必要としている時期に、Metaのプラットフォームが如何にして暴力と非人間化を媒介したのかを検証する。Metaは、ヘブライ語によるジェノサイドへの教唆を無制限に拡散させ、パレスチナ側の主張を組織的に検閲し、重要な情報を隠匿することで、デジタル上と現実世界の危害を悪化させた。
2024年1月26日、国際司法裁判所(ICJ)は南アフリカ対イスラエル訴訟において仮保全措置を発令し、ガザ地区でジェノサイドが行われている可能性を認めた。命じられた措置の中には、「直接的かつ公然たるジェノサイドへの教唆」を防止し処罰する明確な要件が含まれていた(4)。その後2025年6月、国連調査委員会は、ガザ地区の学校や宗教施設に対する広範な破壊を含むイスラエルの行動が、ジェノサイドへの教唆に該当すると結論付けた。
サイトや文化インフラへの攻撃は、人道に対する罪である絶滅に相当し、これはパレスチナ人の生活を根絶しようとする継続的なキャンペーンであることを確認している(5)。
しかし、こうした明確な法的判断にもかかわらず、Metaは国際人道法に違反する可能性のあるコンテンツを依然としてホストし続けている。その投稿者はイスラエル政府高官や軍関係者であり、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状が出ている人物も含まれている(6)。これらの人物は、Metaがイスラエルとパレスチナに関連するコンテンツを不均衡に扱っていることを浮き彫りにしている。パレスチナ人ユーザーは、自らの現実を共有しただけでコンテンツ削除、アカウント制限、アルゴリズムによる抑制に直面する一方で、ジェノサイドへの教唆投稿は規制されないままである。
ジェノサイド扇動の増幅と被害者の沈黙は、単なるコンテンツモデレーションの失敗という以上の事態である。これは責任放棄であり、Metaが国際法、ジェノサイド条約、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)、その他の核心的な国際法的枠組みを遵守しているかについて深刻な疑問を投げかけている。世界的な影響力を持つ企業として、Metaは人権を尊重し、適切な評価を実施し、自社のサービスが人権侵害を引き起こすか助長するために利用されるのを防ぐための実質的な措置を講じる義務がある。
ここで問題となっているのは、言論の自由という以上の事態である。安全そのものの問題なのである。Metaのプラットフォームは危険なコンテンツを抑制できなかっただけでなく、非人間化、扇動、暴力の仕組みとなっている。これはミャンマー(8)やエチオピア(9)など類似の文脈における記録された失敗を踏まえると特に憂慮すべき事態だ。これらの事例ではMetaの不作為が暴力の激化を助長した。パレスチナでもMetaは警告、データ、世論の圧力(10)があるにもかかわらず、ここでも行動を起こそうとはしていない。
本報告書は、7amlehによる記録と監視、ならびに市民社会パートナーの活動に基づいている。7orデジタルの権利侵害監視機関のデータ、調査報道、その他の公開情報源を活用している。本報告書は、Metaが暴力扇動を助長する役割を果たしていること、そして自社の監査機関であるビジネス・フォー・ソーシャル・レスポンシビリティ(BSR)が2022年報告書「イスラエル・パレスチナにおけるMetaの影響に関する人権適切な評価」(11)で推奨した重要な人権保護措置すら実施していないことを明らかにしている。
本報告書は、Metaがパレスチナとイスラエルで犯した失敗を、ミャンマーやエチオピアを含む大規模な暴力に共犯してきたという広範囲でみられる問題の一部として位置づけている。Metaのポリシーがプラットフォーム上でヘブライ語による扇動を許容する一方で、パレスチナ人を不当に沈黙させる行動パターンを検証する。また、デジタル空間での扇動がパレスチナ人への物理的攻撃にどう転化されるかを分析する。最後に、報告書は政策立案者、市民社会、そしてMeta自身に対して、過去の危害を是正し、将来の国際犯罪への共犯を防止するための具体的な提言を行う。
本報告書は主にMetaに焦点を当てているが、説明責任の基盤を確立し、変革を要求するための記録として役に立つことを目的としている。パレスチナで最も広く利用されるプラットフォームの一つとして、また比類なき影響力を持つグローバルメディア企業として、Metaは説明責任を問われねばならない。ジェノサイドの時代において、中立は選択肢ではない。作為または不作為による危害の助長は、プラットフォームを共犯者とするものである。
注
1. Meta、2024年第4四半期および通期決算を発表、Meta投資家向け情報、2025年1月29日、http://www.investor.atmeta.com/
2. Ipoke、2022年度第7回年次報告書を発表、https://www.alwatanvoice.com/arabic/news/2023/01/01/1504849.html 2022 Ipoke
3. イスラエルにおけるソーシャルメディア及びデジタルプラットフォームの利用状況(2024年)、イスラエルインターネット協会、2024年4月21日、参照先:https://en.isoc.org.il/data-and-statistics/social-media-and-digital-pla…
4. ガザ地区におけるジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約の適用申立書(南アフリカ対イスラエル)、国際司法裁判所、2024年1月26日、参照先:http://www.icj-cij.org/ (日本語 https://www.jca.apc.org/jca-net/sites/default/files/2024-05/20231229sou…)
5. A/HRC/59/26, 独立国際調査委員会の報告書, 国連総会, 2025年6月, 参照: https://docs.un.org/en/A/HRC/59/26
6. ローマ規程第19条(2)に基づくイスラエルの裁判所管轄権異議申し立てに関する決定、国際刑事裁判所、2024年11月21日、参照:https://www.icc-cpi.int/court-record/icc-01/18-374
7. #Hashtag Palestine 2024, 7amleh, 27 Jan 25, https://www.7amleh.org
8. ミャンマー:Facebookのシステムがロヒンギャへの暴力を助長した。Metaは賠償責任を負うべきだ、Amnesty International、2022年9月29日、参照先:https://www.amnesty.org/en/latest/news/2022/09/myanmar-facebooks-system…
9. エチオピア:Metaの失敗が北部エチオピア紛争中のティグライ人コミュニティへの虐待を助長した、Amnesty International、2023年10月31日、参照:https://www.amnesty.org/en/latest/news/2023/10/meta-failure-contributed…
10. 2024年キャンペーン:パレスチナを沈黙させるな https://stopsilencingpalestine.com/ およびMeta、パレスチナに発言をさせろ! http://www.meta.7amleh.org/ (日本語 https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowled…-
org_intro_jp/)
全文は下記のPDFファイルをごらんください。
https://www.jca.apc.org/jca-net/sites/default/files/2025-09/7amleh_meta…