(JCA-NETの前書き)
すでに多くのマスメディアが報じているように、韓国では尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による戒厳令の宣言が出され、軍が国会に派遣されるといった事態が起きました。戒厳令は、国会議員や多くの民衆が国会に結集し、軍の行動を阻止することで6時間後に解除されましたが、政治状況は流動的です。

以下に訳出したのは、韓国の進歩ネットワークの緊急声明の日本語訳(機械翻訳に若干の校正を加えたもの)です。この声明にあるように、SNSにおいても一時利用できない状態が起きました。原因は不明ですが、これまでも世界各国で現政権が危機に直面したときに、通信を遮断したり監視・規制することが繰り返されていることに私たちは留意する必要があります。また偽情報などの問題にも触れています。声明では、こうした緊急事態であるからこそコミュニケーションの権利を確保し、弾圧に備えることが大切であると訴え、デモなど抗議行動に参加する場合の注意事項やネットワーク遮断への対処などについても言及されています。是非多くの日本の皆さんにも読んでいただきたい声明です。

自民党政権は改憲のなかで「緊急事態条項」を盛り込もうとしています。それがいかに危険なことなのかを間近に知ることになりました。私たちは、今回の韓国の人々による戒厳令に抗して軍隊にもひるむことなく国会に結集した行動から多くのことを学ぶことができると感じています。多くの韓国の人々に心からの連帯を送ります。


https://act.jinbo.net/wp/50017/

危機状況であるほど情報人権と自由なコミュニケーションのための備えが必要だ

[声明] 人権と民主主義を破壊した尹錫悦は辞退せよ

By진보넷2024/12/04

1.昨日(12/3)、尹錫悦の突然の非常戒厳宣布で韓国の人権と民主主義が大きな危機に陥った。幸い、国会の戒厳解除と国会前に集まってきた市民の力で最悪の状況は免れた。しかし、銃を持って国会に乱入した戒厳軍の姿は、私たち全員に衝撃を与えた。進歩ネットワークセンターは、反憲法的に民主主義を破壊した尹錫悦の即刻的な退陣を要求する。国会は即刻、尹錫悦を弾劾せよ。また、国会議員の国会出入りを遮断し市民を威嚇した軍と警察にも厳重な責任を問わなければならない。

2.私たちは昨日の戒厳のような緊急な状況が再び発生する可能性を排除できない。このような危機状況では市民の円滑な情報交換とコミュニケーションを保障するための万端の準備が必要だ。情報に対するアクセスと自由なコミュニケーションの権利は、市民の基本権であると同時に民主主義の核心だ。

3.昨日の戒厳宣布直後、一定時間に亘り、Naver、DaumCafeなどに対する接続ができなかったり、コメント機能が停止したりしたことは憂慮して当然の状況だ。言論報道によると、突然の接続の輻輳でしばらくの間システムに障害が発生したのだという。実際に単純なサービス障害だったのか、あるいはサービス遮断に対する政府の要求があったのか、誰かのDDoS攻撃があったのか、徹底した調査が必要だ。たとえトラフィックの輻輳によるサービス障害だとしても、緊急状況で公論場の役割を果たせるシステムを運営している事業者として、NaverとKakaoはサービスの安定的運営に対する責任を負担しなければならない。

4.一方、緊急なニュースが多様なSNSと掲示板を通じて共有されるうちに、一部虚偽情報が含まれていた事実は私たちを憂慮させる。緊急な気持ちで共有したニュースが虚偽情報である場合、意図と関係なく、むしろ混乱を拡大し、市民の誤った判断を引き起こしかねない。衝撃的な情報であるほど、イメージ検索などでイメージが生成された時期や出処などを確認し、テキストで構成された情報も信頼するに足る根拠があるのか再度確認する慎重さが必要だ。

5.今後、もしかして再発しかねない危機状況において、市民が持続的に情報にアクセスし、コミュニケーションできる備えをすることも重要だ。

  • KakaoTalk、Telegramなど特定のアプリケーションに対する接続が遮断された場合、VPN(例えば、無料VPNにVPN Protonなどがある)やTorブラウザを使用できる。
  • もし通信網遮断のような極端な状況、または大規模集会で通信がうまくいかない場合、ブリッジファイ(Bridgefy)のようなメッシュネットワーク(Mesh Network)を使用することもできる。(ただし、中間で奪い取れるなどセキュリティの側面では脆弱であるため、現場の判断が必要だ)

6.社会運動活動家や政治家の場合、捜査機関の押収捜索に備え、自身と団体の情報を守るための備えも必要だ。最小限、予め次のような設定を知っておかなければならない。

  • 望まない携帯電話のロック解除が発生することのないように、指紋または顔認識のような生体認識方式の代わりに、数字暗号などで携帯電話ロックを解除できるように設定すること。
  • セキュリティの脅威がある場合、つまり集会に出かけるときや押収捜索の脅威がある場合、iPhoneは「遮断モード」(Lockdown Mode)、Galaxyスマートフォンは「最大制限機能」に設定すること。
  • デジタルセキュリティに対する詳細な内容は、進歩ネットワークセンターが緊急に公開した2024デジタルセキュリティガイドを参考にできる。https://act.jinbo.net/wp/50008/

7.進歩ネットワークセンターは、尹錫悦退陣を越えて、この危機を韓国社会の人権と民主主義を一段階進展させ得る契機にすることを提案する。進歩ネットワークセンターもまた、このためのあらゆる努力をすべて行うだろう。特に、市民の情報人権とコミュニケーションの自由を死守するため積極的な役割を果たすだろう。

2024年12月4日
進歩ネットワークセンター
(翻訳 井上和彦)

付記:本声明の日本語訳は当初機械翻訳に若干手を入れたものとして公表しましたが、その後井上和彦さんから了解を得て訳文を井上さん作成のものに差し替えました。この場を借りてお礼を申し上げます。(理事、小倉利丸 2024/12/5)