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(まえがき)以下の記事は、10月のグーバル暗号化デーを踏まえて、暗号化の重要性について、あらためて多くの人々にアピールする必要性から書かれたもので、APCのウエッブサイトに掲載されたものを訳したものです。JCA-NETもグローバル暗号化デーの国際的なアクションへの参加企画として、月例のセミナーを暗号化特集として提供しています。詳しくはこちらをごらんください。
(APC)暗号化とは何か、なぜそれが人権の鍵なのか?
ベロニカ・フェラーリ
2021年10月18日|2024年4月24日更新
暗号化とは何か?
暗号化とは、メッセージやファイルを解読するための鍵やパスワードを持つ人々以外には読めないようにするプロセスである。暗号化する際、元の表現を別の形に変換する方法でファイルを符号化し、一定の手順を踏んで鍵やパスワードを使用する権限のある当事者だけが解読(元に戻す)できるようにする。APCのメンバーであるOpen Net Koreaが言うように、暗号化とは「閉ざされたグループだけに知られる秘密の言語で」何かを語ることである。
暗号化は、インターネットやデバイス、電子メールを利用する際に、情報を干渉から守るための最良のテクニックのひとつである。私たちは、暗号化されたアプリケーション、特別なハードウェア、またはその両方を組み合わせて使用することができる。より強力な暗号化はエンド・ツー・エンド暗号化で、サーバーに送信される前からデータを暗号化する。正しく使用すれば、現在のテクノロジーで解読することは事実上不可能である(あるいは極めて時間がかかる)。
なぜ暗号化が人権の鍵なのか?
暗号化は、私たちのオンライン・コミュニケーションにおける機密性と匿名性を維持するための鍵であり、したがって、さまざまな人権を享受するために不可欠である。デジタルの時代におけるプライバシーに関する最新の決議において、国連人権理事会は、特にプライバシー、意見と表現の自由、平和的集会と結社の自由の権利の享有を確保するための暗号化、仮名化、匿名化の重要性を強調した。
2015年6月、国連の意見と表現の自由に関する特別報告者は、表現の自由の完全な行使のための暗号化の基本的な役割に焦点を当てた報告書を発表し、とりわけ人々が干渉されることなくインターネットを利用して意見を述べたり、オンライン上の情報にアクセスしたりすることを可能にするプライバシーの手段を暗号化がどのように確立しているかを検証した。この報告書はまた、匿名性がプライバシーの権利とどのように関連しているかを調査し、「個人は、自分についてどのような情報が共有され、その情報がどのように使用されるかをコントロールする能力がなければ、自分のプライバシーが保護されているという合理的な期待を持つことはできない」と説明している。
APCがこれまでも強調してきたように、匿名性もまたプライバシーの権利と密接に結びついている。そして、プライバシーの欠如、あるいはプライバシーの欠如の認識さえも、表現の自由に萎縮効果をもたらし、自己検閲につながる可能性がある。
平和的集会と結社の自由に関する国連特別報告者のマンデート(指令)も、サードパーティや政府からの不当な干渉を受けずに、集まり、つながり、組織化し、活動を調整するための安全なオンライン空間を提供する暗号化の重要性を取り上げている。
暗号化はまた、自己決定やデジタル空間を占有する方法とも関連している。APCのメンバーであるMay First Movement Technologyは、暗号化を「データとテクノロジーのインフラと開発そのものに対する民主的でコミュニティによる所有権を取り戻すための闘い」の重要な一部であると考えている。
私たちがサイバーセキュリティに関する説明で述べたように、暗号化の弱体化は人権を損なう。悪意ある行為者が人々の個人情報や通信にアクセスすることを容易にし、ジャーナリストの情報源が明らかになったり、人権擁護者が政府から標的にされたり、虐待関係にある人が脅迫されたりする可能性がある。暗号化と匿名性は、さまざまな権利の行使に必要なプライバシーとセキュリティを提供するものであり、強化されるべきである。
なぜ暗号化が女性や多様なジェンダーや性的表現を持つ人々にとって特に重要なのか?
女性や多様なジェンダーや性的表現を持つ人々は、プライバシーの侵害に対して特に脆弱である。なぜなら、彼らの経験は、暴力や他のタイプの人権侵害の特別なリスクにさらされる、既存の構造的不平等や差別の文脈の中で行われるからである。したがって、暗号化と匿名性は、リスクにさらされている団体、特にセクシュアルおよびジェンダーの権利活動家やオンライン暴力の標的となっている人々に力を与え、保護するために不可欠なツールである。
国連人権高等弁務官は2017年の報告で、女性のプライバシーへの権利は、暗号化と匿名性から利益を得る能力を意味すると指摘している。「プライバシーへの干渉のリスクを最小化するためであり、これは特に女性の人権活動家や、その社会でタブーとされている情報を得ようとする女性にとって適切である」。間もなく正式に発表されるジェンダー正義と表現の自由に関する新しい報告書の中で、表現の自由に関する国連特別報告者であるアイリーン・カーンは、匿名性と暗号化について、「オンライン状況において女性が意見と表現の自由を享受するために不可欠な側面であり、保護されなければならない 」と述べている。
匿名性は、差別から自由である権利を実現する重要な要素である。なぜなら、匿名性は、とりわけ個人やマイノリティ団体が、性的指向のようなデリケートな事柄について付き合うことを可能にするからである。APCが強調してきたように、匿名性と暗号化はまた、ヘイトスピーチやオンライン暴力と闘い、性的権利の表現と実現に力を与えるツールでもある。
また、オンラインとオフラインの領域が連続しているため、暗号化の使用はオンラインだけでなく、オフラインの人権保護にも不可欠であることに注意することも重要である。リスクにさらされている集団は、オンライン上の交流やコミュニケーションだけに関連するのではなく、彼らの生活実態にも影響を及ぼす結果に直面する。暗号化の制限は、リスクにさらされている特定の集団の身体的完全性と生命を危険にさらす可能性がある。
最後に、APCの「インターネットのフェミニズムの理念」は、インターネット上の匿名性は、特にセクシュアリティやヘテロ規範のタブーを破り、ジェンダー・アイデンティティを実験するような場合、オンラインでの表現の自由を可能にし、差別の影響を受けている女性とクィアの人々に安全な空間を提供すると説明している。
国家や企業はどうすべきか?
多くの国家(および企業)が、暗号化ツールを弱める措置を実施または提案している。例えば、製品に「バックドア」を組み込むことで、彼らは最強の保護を迂回し、一見安全な情報に無制限にアクセスすることができる。このいわゆるバックドアは、ジャーナリストの情報源を暴露したり、人権擁護者やそのネットワークを標的にしたり、虐待関係にある人を脅迫したりすることにつながりかねない。表現の自由に関する元国連特別報告者デビッド・ケイは、2015年の報告書で次のように述べている。「暗号化によるバックドアアクセスの要件は、たとえ正当な目的のためであっても、表現の自由を妨げられることなく行使するために必要なプライバシーを脅かすものである」
世界中の国々が、安全保障や法執行の名前の下に、通信の暗号化の使用を法的に禁止している。APCのメンバーであるCIPESAの調査によると、アフリカでは多くの国で、暗号化ソフトウェアやハードウェアの所持や使用を犯罪とすることで、匿名性や暗号化の使用を制限する法律が成立している。このような傾向は、エクアドルのオラ・ビニのケースのように、デジタル・システムの脆弱性を特定し、報告するデジタル・セキュリティ・リサーチや技術専門家への迫害を伴うようになってきている。
表現の自由に関する国連特別報告者が勧告したように、国家は強力な暗号化と匿名性を促進すべきであり、このようなテクノロジーの使用を妨害するような措置は慎むべきである。さらに、APCがこれまでに述べてきたように、国家は、匿名性の制限によって権利を侵害された個人、特にリスクにさらされている団体の個人を保護する効果的な救済メカニズムを導入すべきである。
デジタルのサービスや製品を開発する企業は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」(日本語)で定められているように、人権を尊重する責任を負っている。したがって、国家だけでなく企業も、暗号化通信のブロッキングや送信制限を控えるべきであり、国連人権理事会が強調したように、暗号化テクノロジーの実現に向けて取り組むべきである。
Digital Society of Africa(DSA)の共同設立者兼最高運営責任者であり、APCの個人会員でもあるナターシャ・ムソンザ氏の言葉を借りれば、「政府や企業は、データを狙う悪意ある行為者もいるのだから、暗号化を積極的に推進し、利用すべきである」。
切り替えよう: グローバル暗号化デー
暗号化と匿名性を高めるテクノロジーは、プライバシーの権利、差別を受けない権利、表現の自由、結社・集会の自由などの権利の完全な実現のために不可欠である。バックドア・アクセスの提案、これらのツールの使用を犯罪とする法律、デジタル・セキュリティの専門家の迫害などは、これらの権利に対する脅威となっている。
今年10月21日の世界暗号化デー(Global Encryption Day)に向けて、APCの活動に参加しよう。
この日は、世界中の政府や企業に対し、人々が安全でプライベートかつ匿名なオンライン・コミュニケーションを確保するために暗号化を使用する権利について伝え、暗号化を保護・強化することが人権にとって極めて重要であることを強調し、この文脈における約束と責任を果たすよう求める機会となる。
この記事には、APCの技術コーディネーターであるロクサーナ・バッシと、APC通信・情報ポリシー・プログラムのマネージャーであるヴァレリア・ベタンコートも寄稿した。
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