JCA-NETは下記の声明の共同署名者になりました。
(追記)また、1月31日に、外務省に宛てて、外務省の国連関連の部署に周知するようメールで申し入れをしました。

2024年1月23日

国連アドホック委員会の最終会合を前に、サイバー犯罪条約案に関する共同声明

私たちは、国連アドホック委員会の最終会合に参加する各国代表団に対し、提案されているサイバー犯罪条約(以下、条約)がサイバー犯罪への取り組みに焦点を絞ったものであり、人権を損なう道具として使用されることのないよう求める。これらの欠点に対処するための有意義な変更がない限り、条約は否決されるべきである。

市民社会グループは、草案を改善し、既存の人権法および基準、国連憲章の原則、法の支配、さらにはサイバーセキュリティを改善する取り組みにおいて法的確実性を提供するためのベストプラクティスと完全に整合させるために、時間と専門知識を提供してきた。提案されている条約の条文に関する私たちの懸念は、世界各地での私たちの経験と人権擁護活動によってもたらされたものである。国内および地域のサイバー犯罪法は、残念なことに、ジャーナリストやセキュリティ研究者を不当に標的にし、反対意見や内部告発者を抑圧し、人権擁護者を危険にさらし、表現の自由を制限し、不必要で不均衡な国家監視措置を正当化するために、あまりにも頻繁に悪用されている。

過去2年間の交渉を通じて、市民団体やその他の利害関係者は一貫して、サイバー犯罪と闘うために、人権や男女平等、そしてこの条約によって生活に影響を受ける人々の尊厳を犠牲にしてはならないことを強調してきた。それは、セキュリティーの調査研究を阻害し、私たち全員の安全性を低下させる結果になってはならない。サイバー犯罪対策と称して条約の関連条項が濫用される可能性を避けるためには、強固で意味のあるセーフガードと制限が不可欠である。遺憾なことに、2024年2月までに最終決定される予定の条約案の最新草案では、私たちの多くの重大な懸念に対処できていない。この条約案がこのまま承認されれば、虐待や人権侵害のリスクは飛躍的に高まり、私たちのインターネットはより不安全になると私たちは確信している。

私たちは特に、条約の最終草案について以下の点を懸念している:

  • この条約最終草案が国家に対して犯罪化するように求めている行為の範囲は、依然として広すぎる。この最終草案には、サイバー犯罪やその他のコンテンツ関連犯罪が含まれ、他の "適用される国際条約や議定書 "の下での犯罪に無限定に言及することで、法的不確実性を生み出している。この広すぎる範囲は、この条約が合法的なオンライン表現を犯罪化するために使用される危険を生じさせ、差別的な影響を生み出し、ジェンダー不平等を深める可能性が高い。
  • セキュリティ調査研究、内部告発者、活動家、ジャーナリストを過剰な犯罪化から守るのに十分な文言が盛り込まれていない。
  • 国際人権法の下での国家の義務への言及が不十分であり、刑事手続きの章での国内人権保障措置が弱く、サイバー犯罪への取り組みが人権の適切な保護を提供し、合法性、差別を受けない権利、正当な目的、必要性、比例性の原則に従っていることを保証するために、条約全体に適用可能な強固な保障措置を明示的に組み込んでいない。
  • この条約草案がジェンダー・バイアスによる人権侵害に使用されないようにするための重要な、効果的なジェンダー主流化が欠けている。
  • 安全な通信に対する信頼を損ない、事前の司法承認の要件や、合法性、差別を受けない権利、正当な目的、必要性、比例性の原則を含む国際人権基準を侵害するような方法で、国境を越えた情報共有を監視、保管、許可する法的体制を構築することを提案していること。
  • 特定の犯罪捜査の範囲を超え、データの保護と人権の保障措置が明示されないまま、法執行協力のための過剰な情報共有が許可されている。

条約が保護しようとする人々の人権と基本的自由を危険にさらすことなく、また、開かれたインターネットのためのサイバーセキュリティを改善する努力を損なうことなく、サイバー犯罪と闘うという特定の目標を追求する場合にのみ、条約は前に向って進むべきである。現在の草案は、この目標と基本的な最低要件にはるかに及ばないものであり、包括的に修正、改正、あるいは否決されなければならない。

したがって、私たちはすべての国家の代表団に対し、以下のことを要請するものである。

  • 条約全体の適用範囲を、条約本文に明確に定義され含まれているサイバーに依存する犯罪に絞ること。
  • セキュリティリ調査研究、内部告発者、ジャーナリスト、人権擁護者が正当な活動によって訴追されないこと、またその他の公共の利益のための活動が保護されることを保証する条項を条約に盛り込むこと。
  • 差別を受けない権利、合法性、正当な目的、必要性、比例の原則など、データの保護と人権に関する明確な基準が条約全体に適用されることを保証すること。法の支配に従って国境を越えた捜査や 協力が行われるだけでなく、データへのアクセスや共有のために、事前の司法許可の原則など、具体的で明確な保護措置が講じられなければならない。
  • サイバー犯罪の防止と撲滅の取り組みにおいて、条約全体および各条項を通じてジェンダーを中心に据えること。
  • 手続き上の措置や国際協力の適用範囲を、条約の犯罪化の章で定められたサイバーに依存する犯罪に限定すること。
  • サイバーセキュリティと暗号化を弱体化させるために悪用される可能性のあるいかなる監視条項も承認しないこと。

国連アドホック委員会が最終会合を開催するにあたり、私たちは各国代表団に対し、現在の草案におけるこれらの重大なギャップに対処する努力を倍加するよう求める。条約交渉プロセスの最終的な成果は、人権を保護するための強力かつ有意義なセーフガードを効果的に組み込み、公正さと適正手続きのための法的明確性を確保し、法の支配の下での国際協力を促進する場合にのみ受け入れられるとみなされるべきである。提案されている条約は、人権に有害な侵入や監視行為を正当化するものであってはならない。

これらの最低要件がない限り、私たちは各国代表団に対し、この条約案を拒否し、採択のために国連総会に諮らないよう求める。

署名団体
Submitted by NGOS participating under operative paragraphs 8 or 9

Access Now
Association for Progressive Communications (APC)
ARTICLE 19
Center for Democracy and Technology
CyberPeace Institute
Data Privacy Brasil
Derechos Digitales
Electronic Frontier Foundation
Freedom House
Global Partners – Digital
Hiperderecho
Human Rights Watch
Instituto Panamericano de Derecho y Tecnologia (IPANDETEC)
International Commission of Jurists (ICJ)
Jokkolabs Banjul
Jonction – Senegal
Kenya ICT Action Network (KICTANet)
Privacy International
R3D: Red en Defensa de los Derechos Digitales
Temple University, Institute for Law, Innovation & Technology (iLIT)

Signatories supporting the statement

7amleh – The Arab Center for the Advancement of Social Media
ActiveWatch
Advocacy for Principled Action in Government
Afghanistan Journalists Center (AFJC)
Africa Freedom of Information Centre (AFIC)
AfroLeadership
Albanian Media Institute
Alliance of Independent Journalists Indonesia (AJI)
Alternatif Bilisim (AiA-Alternative Informatics Association)
Alternative ASEAN Network on Burma (ALTSEAN)
Bahrain Center for Human Rights
Bangladesh NGOs Network for Radio & Communication (BNNRC)
BC Civil Liberties Association (BCCLA)
Bytes for All
Cambodian Center for Human Rights (CCHR)
Cambodian Center for Independent Media (CCIM)
Cartoonists Rights Network International
Center for Media Freedom and Responsibility
Centre for Feminist Foreign Policy (CFFP)
Centre for Free Expression (CFE)
Centre for Information Technology and Development (CITAD)
Centre for Independent Journalism (Malaysia)
Chaos Computer Club (CCC)
Committee to Protect Journalists
Douwe Korff, Emeritus Professor of International Law, London Metropolitan University
Digital Empowerment Foundation
DigitalReach
Digital Rights Foundation
Digital Rights Ireland
Digitale Gesellschaft
Electronic Privacy Information Center (EPIC)
Epicenter.works – for digital rights
European Center for Not-for-Profit Law (ECNL)
European Digital Rights (EDRi)
European Summer School in Internet Governance (EURO-SSIG)
Federation of Nepali Journalists
Foundation for Media Alternatives
Fundación Karisma
Fundación Internet Bolivia
Foundation for Information Policy Research
Freedom Forum, Nepal
Free Media Movement – Sri Lanka
Globe International Center
Government Information Watch
Gulf Center for Human Rights (GCHR)
Human Rights Network for Journalists-Uganda (HRNJ-U)
IFoX (Initiative for Freedom of Expression–Turkey)
Independent Journalism Center Moldova
International Civil Liberties Monitoring Group (ICLMG)
International Federation of Human Rights (FIDH)
International Press Institute (IPI)
International Press Centre (IPC) Lagos-Nigeria
Institute for Research on Internet and Society (IRIS)
Instituto de Pesquisa em Direito e Tecnologia do Recife – IP.rec
Instituto Nupef
IT-Pol Denmark
Japan Comuter Access Network (JCA-NET)
Korean Progressive Network Center – Jinbonet
Laboratory of Public Policy and Internet – LAPIN
LaLibre.net Tecnologías Comunitarias
Ligue des droits de l’Homme (LDH)
Maharat Foundation
Media Foundation for West Africa (MFWA)
Media Rights Agenda (MRA)
Media Institute of Southern Africa (MISA)
Media Policy Institute
Media Watch
Metamorphosis Foundation
Mizzima
OpenMedia
Pakistan Press Foundation
Palestinian Center for Development & Media Freedoms (MADA)
Paradigm Initiative (PIN)
PEN International
Restore the Fourth
Social Media Exchange (SMEX)
SocialTIC
South East Europe Media Organisation (SEEMO)
South East European Network for Professionalization of Media (SEENPM)
Southeast Asia Freedom of Expression Network (SAFEnet)
Statewatch
Surveillance Resistance Lab
Surveillance Technology Oversight Project (STOP)
Syrian Center for Media and Freedom of Expression
TEDIC
The Tor Project
Unwanted Witness
Valerie Steeves, Full Professor, Department of Criminology, University of Ottawa
Vigilance for Democracy and the Civic State
Wolfgang Kleinwaechter, Professor Emeritus, University of Aarhus, former ICANN Board Member